小説『かがみの孤城』ネタバレ感想。辻村深月が描く心温まるファンタジーミステリ【2018年本屋大賞受賞作】

かがみの孤城

思春期の特有の微妙な心情を捉えた端正な文章と張り巡らされた伏線が鮮やかに繋がる展開で人気を博す
直木賞作家 辻村深月の話題作『かがみの孤城』を読みましたのでレビューしていきます!

 

小説『かがみの孤城』のあらすじ

 

どこにも行けず部屋に閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然、鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先の世界には、似た境遇の7人が集められていた。9時から17時まで。時間厳守のその城で、胸に秘めた願いを叶えるため、7人は隠された鍵を探す。

 

 

小説『かがみの孤城』の評価

 

  • 2018年 本屋大賞 第1位
  • 王様のブランチ ブック大賞 2017
  • ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2017 小説ランキング 第1位

 

 

 

作者 辻村深月(つじむら・みづき)の経歴

 

  • 1980年生まれ。
  • 2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。
  • 2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞を受賞。
  • 2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞を受賞。

他の著書に『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『島はぼくらと』『ハケンアニメ!』など多数。

 

 

以下、ネタバレありです。

 

 

 

 

小説『かがみの孤城』の感想

 

辻村ワールド全開で描かれるファンタジーミステリは著者最高傑作と言っても過言ではないです。
全544ページとなかなかのボリュームですが、とても読みやすく面白いのでとにかくぐいぐいと読み進めていくことができます。
帯文に違わぬ「一気読み必至」の小説でした。

 

辻村作品に特徴的な前半にちりばめられた謎・伏線・違和感が後半でみごとに回収される圧巻の展開が本作でも見られました。
ミステリとしてはわりとストレートだったので展開を予測できた読者も多かったのではないでしょうか。
ただ、そのミステリ的なシンプルさは登場人物たちの葛藤や成長を描く上ではむしろプラスに機能していたように感じます。

 

本作の主人公たちは中学生。
学校生活に悩みを抱える子供たちです。

今まさに学校生活に悩んでいる人にとって救いになる一作であることは間違いないですが、ぼくはこの作品はむしろ、大人が読むことに意義があるのではないかと思います。

子どもたちの抱える悩みというのは大人にはなかなか理解しがたいことです。
自分たちが子どもだったとき、同じように悩んでいたはずなのにも関わらず。

大人の役目は子どもを正しい方向へ導くことだけではなく
子どもがどんな選択をしても受け止めてあげる余裕を持つことなんじゃないかなと。

悩みの原因そのものを取り除くことはできなくても
そばに寄り添って、手を差し伸べることはできるんじゃないかと。
「一人じゃない、闘わなくてもいいんだ」と伝えることはできるんじゃないかなと。

 

作中で「誰一人として同じ悩みを抱えていない」というようなセリフが登場しますが、物語上の最大のトリックとして機能する“時間のズレ”は、「時代・年齢を超えても悩みを抱えている人はいるんだ。それはあなたがダメな子だからではないんだ」と、学校に馴染めない子どもたちを肯定しているようにも感じ取れます。
誰一人として同じ悩みを抱えていなくても、どこかに自分を理解してくれる人がいる。
そんな事実は、いろんな悩みを持つ子どもたちにとってもとても心強いメッセージのはずです。

 

逃げることは恥ずかしくないし、怖くない。
今いる世界だけが、世界のすべてではない。

やさしいまなざしの中にも、力強いメッセージが込められた強度の高い物語です。

 

今、学生の人にも
昔、学生だった人にも
最高におすすめできる作品です。

 

本屋大賞受賞によって、この素敵な作品がたくさんの人の元に届けばいいなと思います。