ドラマ『アンナチュラル』第1話ネタバレ感想。『逃げ恥』野木亜紀子初のオリジナル脚本!「不条理な死」と向き合う大傑作サスペンス。

アンナチュラル第1話

今更ながらドラマ『アンナチュラル』の感想を書き殴ってやりたいと思います。

まず初めに断っておきますが。
このドラマ・・・・・・

控えめに言っても最高です!!

 

この素晴らしすぎるドラマを一話一話丁寧にレビューしていきたいと思います。

ぼくの拙い文章で、少しでも『アンナチュラル』の魅力が伝われば幸いです。

 

 

ドラマ『アンナチュラル』の作品情報

 

【キャスト】
石原さとみ 井浦新 窪田正孝 市川実日子 / 薬師丸ひろ子(特別出演) / 松重豊
池田鉄洋 竜星涼 小笠原海(超特急) 飯尾和樹(ずん) / 北村有起哉 大倉孝二 /

【スタッフ】
脚本:野木亜紀子
主題歌:米津玄師「Lemon」(ソニー・ミュージックレコーズ)
音楽:得田真裕
法医学監修:上村公一 鵜沼香奈(東京医科歯科大学)
プロデューサー:新井順子 植田博樹
演出:塚原あゆ子 竹村謙太郎 村尾嘉昭
製作:ドリマックス・テレビジョン TBS

 

ドラマ『アンナチュラル』第1話のあらすじ

Unnatural Death #1 名前のない毒

法医解剖医の三澄ミコト(石原さとみ)が働く不自然死究明研究所(unnatural death Investigation laboratory)=通称UDIラボでは、東京都23区外、西武蔵野市を中心に、全国津々浦々で発見された異状死体や犯罪死体を引き受けている。警察や自治体から依頼されて運ばれてくる遺体は年間約400体。その遺体を解剖し、死因を究明するのが、ミコトたちUDIラボの仕事だ。
UDIラボには、三澄班と中堂班の2チームが存在する。三澄班は執刀医のミコト、臨床検査技師の東海林夕子(市川実日子)、記録員の久部六郎(窪田正孝)。中堂班は法医解剖医の中堂系(井浦新)、臨床検査技師の坂本誠(飯尾和樹)。そして、それらの個性的なメンバーを束ねるのが所長の神倉保夫(松重豊)だ。

そんなある日、中年夫婦がUDIを訪ねてきた。一人暮らしで突然死した息子・高野島渡の死因に納得がいかないという。警察医の見立ては「虚血性心疾患」(心不全)。しかし息子は、まだまだ若く、山登りが趣味だというぐらい身体も丈夫で元気だった。心不全という死因は、素人目にも、あまりにも不自然だ。なにか、ほかの原因があるのではないか。夫婦はもっときちんと死因を調べてくれるようにと警察に頼んだが、事件性も不審な点もないと、剣もほろろに断られてしまった、という。

ミコトたちは、さっそく、解剖に取り掛かった。すると心臓にはなんの異状もなく、代わりに、急性腎不全の症状が見つかる。
ミコトたちは、薬毒物死を疑い、詳細な検査にかけるが、死因となった毒物が何かがどうしても特定できない。
そんな折、高野島と一緒に仕事をしていた若い女性同僚が、高野島が亡くなった翌日に、原因不明の突然死を遂げていたことが判明する。

死因を究明すべく高野島のアパートでミコト、六郎、東海林が調査をしていると、高野島の遺体の第一発見者でもある婚約者・馬場路子が現れる。
馬場の仕事は、なんと劇薬毒物製品の開発。
馬場が、もしまだ誰も知らない未知の毒物、すなわち「名前のない毒」を開発していたとしたら……。既存の毒物と比較検出するだけの、現在の毒物鑑定システムでは、「名前のない毒」を検出できない。すなわち、完全犯罪が成立する。
「高野島が死んだときの私のアリバイ?いいえ。一人で自宅にいたのでアリバイはありません」
悠然と微笑む馬場路子に、ミコトたちはどう立ち向かうのか?

 

 

 

以下、ネタバレありの感想レビューです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラマ『アンナチュラル』第1話の感想

 

法医学ドラマという題材

 

まず、法医学ドラマという題材について考えてみたいと思います。

法医学ドラマは、広義の刑事ドラマ(ミステリドラマ)に属する形になります。

事件の謎を解き、真相にたどり着くという刑事ドラマの基本構造に、事件解決の手段として「法医学」という切り口を軸に据えて展開していきます。

 

法医学を題材とした連続ドラマ

 

法医学・監察医などを題材としている連続ドラマと言えば、

国内だと『きらきらひかる』『科捜研の女』『ゼロの真実〜監察医・松本真央〜』

海外だと『BONES – 骨は語る -』『CSI:科学捜査班』

などが代表的な作品として挙げられると思います。

 

法医学ドラマを構成する3つの要素

 

  • 「法医学」という科学的手法を軸にしたミステリ的要素
  • 「監察医・検死官」という職業を通したお仕事モノ的要素
  • 「遺体」を通じたヒューマンドラマ的要素

ほとんどの法医学ドラマは、この3つの要素をミックス&配分を調整して仕上げている形になると思います。

ただ、国内・海外を見ても「法医学」という題材はレッドオーシャンというか、結構やり尽くされている感はあります。

「法医学」そのものが題材でなくても、科学捜査という切り口は現代の刑事ドラマでは必要不可欠な要素なので視聴者としてもわりと見慣れているジャンルであるからです。

 

『アンナチュラル』も概ねこの3つの要素から成立しているのですが、とりわけ特徴的なのはヒューマンドラマ的視点で見た時、従来の法医学ドラマが開拓してきた「死者が何故死ななければならなかったのか」という「遺体(死んだ人間)」に焦点を当てた切り口・アプローチとは意図的に差別化を図ろうとしていることです。

『アンナチュラル』では、法医学という手法を通じて、「未来を生きていく人々を描く」「未来を生きなければならない人々を救う」ことに焦点を当てています。

この視点こそが本作最大の特徴であり、従来の法医学ドラマと一線を画す最大の理由です。

 

 

物語構造の大胆な転換

 

この第1話の凄まじいところは、何と言っても大胆な物語構造の転換にあります。

序盤で、連続毒殺事件の可能性が示唆されます。

この時点では視聴者は犯人が被害者の恋人である馬場路子だ、という前提の元(他に容疑者らしい容疑者もいないので)、犯人探しではなくどのように犯行がなされたかを主眼にしてストーリーが進むものと予想します。

つまり、天才科学者が生み出した「名前のない毒」を「科学捜査」を駆使して突き止めることがドラマ上の中心問題であり主題であると考えます。

ですが、驚くべきことに中盤で死因が毒殺ではなく、国内では未確認の感染症だと判明します。

ここで、ドラマ上の中心問題が「連続毒殺事件の謎を解く」から「感染症がなぜ起きたのか(誰が起こしたのか)」へと変質します。

通常のドラマでありえないほど大胆な構造の転換を図っています。

この展開には思わず唸ってしまいました。

 

死因が感染症であると判明したことにより、UDIラボに依頼した死因の究明が高野島の不名誉な事実(自身が感染症を国内に持ち込んだ原因であること)の発覚に繋がり、その過失に対して誹謗中傷の責め負うという皮肉な結果となってしまいます。

また、路子も高野島の名誉を傷つける行為に間接的に加担してしまったと自らに責任を感じてしまうことになります。(高野島が帰国後に病院で検診を受けたという証拠を提示してしまうことによって)

 

ここまでの構造の転換だけでも十二分に面白いのですが、さらにここからもう一捻り。

感染症の原因が、高野島ではなく帰国後に検診を受けた病院での院内感染であることが分かります。

これにより高野島の名誉回復を図るとともに、これから未来を生きなければならない遺族の割り切れない気持ちを救う胸のすく結末となりました。

被害者の死の原因による割り切れない気持ちを描きつつも、最後にはきっちりと視聴者の溜飲が下がる結末を用意するという手腕はさすがとしか言いようがありません。

また、当初容疑者であった馬場を単なるミスリードの使い捨てにせず、恋人関係でないと考慮しにくい濃密な接触という事実から感染経路の特定に繋げる、という展開は本当に巧いなあと感じました。

 

もう1つ付け加えるとすれば、「恋人」であることがキーであったこの事件と重ねるようにミコト自身がこの事件をきっかけに「恋人」との破局を迎えるというのも面白いです。

『アンナチュラル』において、野木亜紀子氏は第2話以降もたびたび構図の反復や対比を通してテーマを重層化しようと試みています。

物語の強度を高める非常に巧みな方法を効果的に利用していると感じました。

 

 

状況設定の巧みさ

 

どんなドラマでも第1話では必ずキャラクター紹介や世界観紹介が行われます。

限られた時間の中で、必要な情報を適切な形で提示するというのはとても難しいことです。

この状況設定一つをとっても『アンナチュラル』は巧いなあと思います。

 

『アンナチュラル』第1話では、

  • ロッカールームの会話から主要人物それぞれのキャラクター性の提示
  • ホワイトボードにネームプレートを貼るという自然な行為を通して、それぞれのキャラクターの役割の提示
  • 依頼者への相談に応える形で「UDIラボ」という舞台装置の説明
  • 遺体解剖率の低さや解剖率の地域格差などの社会問題提起
  • 「法医学は未来の仕事」であるというテーマについての言及
  • ミコトと恋人との関係性の提示
  • ミコトと家族との関係性の提示、ミコトが抱える暗い過去の示唆
  • +第1話の連続毒殺事件の状況設定

ここまでの情報を冒頭20分の中に盛り込み、ごく自然に処理しています。

地味なようですが、これだけでも野木亜紀子氏の技術の高さが伺えます。

 

 

テーマの提示

 

連続ドラマの「第1話」とは、キャラクター・世界観・トーンを明確にするとともに、シリーズ全体を通じてのテーマやメッセージを伝える重要な役割があります。

『アンナチュラル』でも、第1話の事件を通して

「法医学によって、不条理な死という敵から、未来を生きなければならない人を救う」

というシリーズ全体に通底するテーマ・メッセージを見事に提示していたと思います。

 

 

ドラマ『アンナチュラル』第1話のまとめ

 

 

基本的には絶賛するところしかないのですが、あえて第1話に関して少し苦言を呈してみます。

  • 容疑者が都合よく「毒」になりうる物質の研究をしている。
  • 被害者の高野島が都合よく死の直前に感染症の感染源になり得る中東へ行っている。
  • 被害者の高野島が都合よく感染症の研究をしている病院へ検診を受けに行く(この行為が原因で感染死する)。

とミスリードのための偶然が重なる形になってしまうので、かなり強引なストーリー展開になっている感は否めないかなとも思います。

しかし、こうしたやや強引な展開を考慮しても補って余りある見事な脚本だったと感じます。

『アンナチュラル』が評価される要因は、役者・音楽(主題歌)・演出など様々あると思います。

ですが、やはり最大の功績は脚本を担当する野木亜紀子氏の筆力に他ならないでしょう。

 

科学捜査を主軸としたミステリドラマの構造そのものをミスリードとして利用した大胆な構造の転換。

不条理な死というビターなテーマを引き出しつつも、視聴者の割り切れなさを解消する結末を用意し、法医学という手法を通じて「未来を生きなければならない人々への救い」というメッセージを明確に提示するバランス感覚。

さらにはドラマ全体や最大の事件に関わる謎や伏線も散りばめられた非常に完成度の高い素晴らしすぎる第1話でした。

 

さて、次は第2話のレビューです。